2015年12月23日

精神医療ダークサイド

今年最後の新書シリーズ。

今回紹介するのは、

「精神医療ダークサイド」

講談社現代新書

佐藤光展(読売新聞東京本社 医療部記者)


リハビリ分野でも、整形外科分野でも、皮膚科分野でも、

まぁ、どこにおいても様々な問題は抱えていることは間違いありません。

ゆえにこの本も話半分のつもりで読まなければ…、と思っていました。

しかし、いやー、この本を読むと、

精神科にかかる場合は、よほど慎重に選ばないといけない、と強く胸に刻んでしまうほどの内容でした。


まず精神科が他の科と比べて、一番まだ発展途上分野だということを明確にすべきでしょう。

これはなんとなく理解しやすいですよね。

なにせ「心」の中の話なのです。

もちろん最近は画像検査などでわかるかも?というのもでてきているようですが、まだこれからの分野です。

ゆえに精神科疾患があったとしても、まだまだこの分野ではわからないことが多いため、

精神科医は精神疾患の診断をくだすのには慎重を必要としなければなりません。

しかし、ここで出てくるダークサイドの医師は、ほとんどの人が簡単に表面的な症状だけで診断をし、

その診断にあった処方をします。

そのような診断で、偶然その診断があっていればいいのですが、

そうはいかない人たちが出てくるのは必然です。

この本では、上記のような医師が誤診・過剰診断・過剰投薬などの例が克明に描かれています。

特に注目したのは、第2章。

まず「強制入院制度」を説明している文章を引用します。




【精神保健福祉法では、配偶者ら家族が同意し、精神保健指定医の資格を持つ医師の診断があれば、本人が拒否しても強制的に精神科に入院させることができる。】




本人が拒否しても、強制入院させる権限を、精神保健指定医はもっています。

それだけ権限は巨大です。

しかしこのような強制入院をうまく利用して、妻を隔離させた事例がでていました、

(その夫婦は離婚訴訟中、どうやら夫はこの件で離婚訴訟が却下されることを狙ったようです)

一方的に家族の意見だけを聞き、

そのことだけで本人の診察前に先入観を持ってしまい、強制入院させてしまうのです。

しかし、実は家族がだましていたという事例は、多いのだそうです。(うーん、怖い)

実際にこのように家族の同意を伴う強制入院を「医療保護入院」というのですが、

その実数は、1990年度では8万人だったものが、2011年度には20万人を超えているのです。

ゆえに家族でも様々な家族があるので、

家族の同意を必要としない医療保護入院にすべきだという意見もでてきています。

また問題ない家族の場合でも、家族が同意したということで、

後で本人から恨まれる、ということもあるようです。

そうであれば、医師の判断のみでいいのかもしれません。


しかし、この本では、先ほどから述べているように様々な角度からダークサイドの精神科医の実例がでてきます。

それを読んでいくと、徐々に精神科医も、ちょっと………ということがでてきます。

特に信じられないのは、患者を診察の場で怒鳴りつける事例でした。

心の問題を抱えている人に、その心を傷つけるような対応は、

プロではない、というよりも、それを通り越して、もう犯罪に近い、と思ってしまいます。

(ただし時には患者の状況によっては、厳しいことを言う必要はあります、

さらにしかし医師そのものが感情的になって、ものをいうことは断じて許すことはできません)


最後に、当然しっかりと精神科を行っている人たちはたくさんいます。

実際にこの本は、そのような医師が協力してできたものです。

ブログ管理者が仕事上知っている精神科医においても、信用できる医師はいます。

冒頭に書いたようにどの分野でも名医〜やぶ医者はいるのです、

しかし精神科は、その格差が大きいかもしれない、ということは頭の隅に入れた方がいいかもしれません。

誰だって精神疾患はなりうる病気なのですから…。

posted by リハ技士 at 17:26| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月01日

医学的根拠とは何か

新書の紹介、

医学的根拠とは何か

津田俊秀

岩波新書


最近、ブログ管理者、必要に迫られてではありますが統計を勉強中📖です。

そして、その関係で今まで医師とほんの一部のリハ技士しか使用しなかったSPSSを使おうとしています。

SPSSを知らない人もいるでしょう。

まぁ、簡単に言うと高度な統計ができるソフトなのです。

はっきり言ってブログ管理者、せいぜい平均と標準偏差、

そしてT検定はしたことがあったのですが、その統計処理もエクセルを使用して作成しました。

病院でSPSSを数年前に買ったとき、

必要に迫られていない性もあったのですが…、全然使用していませんでした。

その理由は…。

このソフトは上記の高度な統計ができる→しかし、ただでさえ統計は難しい

→高度な統計、うーん、俺には簡単な統計しか使用しないのでエクセルで十分だし、SPSSって難しそう、という思い込みがありました。

しかし、現在そのソフトのチュートリアルを見て、データーを入力しているのですが、

まず入力自体はそんな難しくないし、

かえってSPSSを使用したほうが欠損値の処理が非常に簡単なので、かえって楽であるということに気づきました。

分析はまだなのですが、チュートリアルを見た感じでは、そんなに難しくなさそうです。


さて、今回の本の概略をこの本から、引っ張り出して引用します。




【日本では医学的根拠の混乱が続いている。そのため多くの公害事件や薬害事件などで被害が拡大した。混乱の元は、医師としての個人的な経験を重視する直感派医師と、生物学的研究を重視するメカニズム医師である。臨床データの統計学的分析(疫学)という世界的に確立した方法が、なぜ日本では広まらないのか。医学専門家のあり方を問う。】




歴史的に、

直感派からは、人それぞれが個性的なのであるから、

人間を数値化し、平均化したような理解は、医療ではないというが意見があり、

またメカニズム派は、メカニズム絶対的決定論をふりかざし、数量化派はたいしたものにならないことを批判してきたようです。

著者は日本ではこの医学的研究ははこのメカニズム論が大きく占めており、

特に基礎研究にあまりにも偏重していると強く述べています。

そして、このことが現在の日本の医療政策に大きな問題になっていると…。

それは日本では実験室での研究がメインであるために、

医学研究者の多くが実際の医療の問題に立ち向かわないし、当然問題意識も起きないと…。


まだまだ医療には分からないことがたくさんあります、

おそらく全てのこの世のなかの謎というのを理解する日なんてこないでしょう。

もちろん、その仕組みを探求しようとすることは大切ですが

統計学的な手法で、

これには、このことが関与している可能性が高い、ということを知るだけでも、

その対応は大きく変わるはずです。


ゆえに私たちはせっかく作成してある各診療科目のガイドライン(当ブログで言えば、例えば脳卒中ガイドライン2015のリハビリの部分とか…)は有効利用したほうがいいと思います。

もちろん、その中でエビデンスの高低はあるものの、

ある程度のリハ対応の指標にはなりうるものだとおもいます。


今一度SPSSの分析を終えたときに、その感想をブログで紹介しましょう。

posted by リハ技士 at 16:54| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月29日

ガリレオ −望遠鏡が発見した宇宙

新書の紹介。

ガリレオ −望遠鏡が発見した宇宙

伊藤和行

中公新書


この本の内容はなかなか(ブログ管理者にとっては)難解なところがあったので、

得意の斜め読みは駆使しましたが、

感じ取れるものはありました。


1章の望遠鏡と天体観測において、

単に科学者としてしか認知していなかったガリレオが、

当時としてはかなり質の高い望遠鏡をも作ることに成功していたことに驚きでした。

1609年初め時点で他の人たちが、4倍程度の望遠鏡しか作成できていない状況で、

9倍もにもなる望遠鏡を開発していたのです。

更に同じ年の11月には20倍もの望遠鏡を開発。

そして20倍の望遠鏡ができたことからか、天体観測を行うようになります。


まず初めて見たのは月でした。

当時の月のイメージは、完全に平らで滑らか、というものでした。

どうしてそう考えられたかというと、

月を含む天上は、(宗教的な思想からその考えになったらしい)完全なものと、とらえていたのです。

しかし、ガリレオは月の表面がでこぼこしていて、

地球のように山のようなもの、谷のようなものがあることを発見します。

更に木星には4つの衛星があることも発見しました。


2章『異界の報告』では、

改良した望遠鏡で発見した事実を載せた本について語られます。

(ちなみにこの本でガリレオは一躍有名人に…)

月のところでは、この本を読む人に納得してもらうために、

かなり写実的な月の表面が描かれています。

そして木星の4つの衛星にも詳しく述べられていますが、

この結果は地球中心説(天動説)を否定する材料にもなりうるものでした。

ガリレオは当時の社会的・宗教的状況から、

強い批判があることは十分わかっていたので、控えめな表現はしつつも、

太陽中心説(地動説)を支持するような内容を掲げていたのです。

(ただし、ガリレオとしては木星の衛星の発見だけでは、太陽中心説を証明するには弱いと考えいたようです)


3章 太陽中心説では、

まず、この『異界の報告』での反響が述べられます。

このガリレオの報告で、

少なくとも天上は完全なものではなさそうだ、ということは多くの天文学者が理解していきます。

しかし当時、力をもっていた哲学者達はそのことを否定しました。

ガリレオは出版後も天体観測を続けていましたが、更に重要な発見をします。

それは金星の満ち欠けでした。

その発見が太陽中心説は正しいという確信をえたものになったのです。


4章『太陽黒点論』については、ここでは割愛しますが、

ガリレオとしては周囲に十分な配慮はしつつも、

太陽黒点についての出版が、更に哲学者や特に宗教界からの反発をくらうのです。


5章 新しい自然研究へでは、ガリレオがどのようなものを目指したのか、

そして結果的に宗教裁判で有罪にはなったものの、

その目指した姿が後の科学者のお手本になっていったことが述べられています。


ではガリレオは何を目指したのか。

それを知るためにはその当時の学問間の階層的構造を知る必要があります。

哲学の学説において、天文学も数学もそれに従う必要があり、

更にその哲学も神学との教義との整合性を図る必要があったのです。

当時の学者はそれに縛られていました。

ガリレオは自然研究という手法で、

常に客観的な観察・実験を続けて、様々な現象の性質を理解していくという、

現在では常識的な科学者のスタイルで仕事を続けたのでした。


まずここまできて思うのは、(ガリレオの不屈の精神も魅力的なのですが)ガリレオの幅広い能力が、

ここまできた鍵を握っていたのだ、ということです。

もしガリレオに望遠鏡を改良する能力がなかったら、

ガリレオが太陽中心説を支持し、その当時の権威にたてつこうとは思いもつかなかったでしょう。

望遠鏡という道具で、まさに目で見える結果(現象)を明確にすることで、

その事実をある意味、権威に対抗できるものということで、実際に対抗し、

大きな発見をすることができたのです。

他の分野にも精通することで、

その専門分野だけでは見えないものがみえてくるものがある、そう教えてくれたような本でした。

posted by リハ技士 at 19:15| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月08日

医療大転換 日本のプライマリ・ケア革命

新書の紹介。


医療大転換 日本のプライマリ・ケア革命

葛西龍樹

ちくま新書


この新書に書かれてある概要を引用します。




【厚労省の検討会は2013年春、総合診療専門医の導入を決めた。これは日本の医療の新たな幕開けであり、多くの困難に直面する現行の医療を根底から変えるチャンスだ。総合診療専門医が諸外国で「家庭医」と呼ばれる専門医の役割を果たして、医療福祉の他職種連携でプライマリ・ケアが整備されれば、無駄な投薬・検査、患者のたらい回し、医療情報不足などの問題を革命的に解決できる。日本の問題点や先進国の実践例を検討し、患者中心の医療への大転換の道筋を示す緊急提言】




まず、プライマリ・ケアって何?というところから説明する必要があるでしょう。

ここはまず、米国国立アカデミーで定義を引用します。




【患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである】




もっと簡単に言えば、

身近にある、医療の事ならば何でも相談に乗ってくれるサービス、とも言い換えてもいいと思います。

このプライマリ・ケアを専門に行うのが、総合診療専門医となります。

まだこれからの資格?で、2020年に専門医がでることになっています。


おそらく著者のこの専門医のイメージは病院での配置というよりは、

開業医をイメージしているようでした。

(確かに定義にある「身近」って言えば、地域に数多く存在する開業医ととらえてしまいます)

その身近な開業医に気軽に医療受診をし、

その開業医の対応では難しいと考えられるものだけを病院で対応する、

その病院でも難しい場合はその地域の中核病院で対応する、

日本もそのような役割分担すべきだとも述べています。


このような総合診療専門医が、リハの世界ではよく使用するICFに則って、

その人すべての問題に対して理解し、対応していく…、

確かに、そのようなことが出来る医師が増えれば、

絶対その人の「健康」を大きく改善させることに繋がるとブログ管理者は確信しています

でもでも、そのようなところを目指す医師は少ない…バッド(下向き矢印)

おそらくこのような総合的な判断が必要とする医療には、

能力が発揮できる専門性は少ないと思っている医師が多いのではないでしょうか。

専門性がないから、やりがいがないと…。

しかし、確実にこの総合的に人を見るという事には、専門性があります、

他のプライマリ・ケア先進国では、プライマリ・ケアでの「専門性」としての実績を上げています。

どうしても臓器ごとのスペシャリストの医師が、

一段上だというイメージは払しょくさせなければなりません。


このような開業医が総合診療できるような体制は、

日本ではかなり遅れていていると著書は指摘しています。

そして、どのような点が遅れているのか、

その遅れの理由は何なのか、

実際にプライマリ・ケアとはどのようなことをするのか、

プライマリ・ケア先進国では、どのように行っているのか、

現在進めようとしている総合診療専門医制度の問題と提言を述べていました。


はたして10年後、この本のタイトルの通り、医療大転換は果たしているのでしょうか。

posted by リハ技士 at 19:28| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月27日

なぜ感染症が人類最大の敵なのか?

久しぶりに新書の紹介。

「なぜ感染症が人類最大の敵なのか?

岡田晴恵

ベスト新書


20138月に発行されたもので、

第一章は2013年上半期での感染症最新情報が詳しく述べられます。

中身は新型インフルエンザなのですが、

内容が(ブログ管理者レベルには)難しくて、得意の斜めよみを駆使しました。

しかし第2章以降は比較的読みやすく内容も興味深いものになっています。

2章はハンセン病について、

3章はペスト(黒死病)について、

4章は梅毒について

6章は結核について

7章は新型インフルエンザについて、

その詳しい歴史と、

その病が引き起こした様々な遺産の説明が結構面白く読めました。

最終章の第8章で21世紀はどんな感染に気をつけるべきかが述べられます。


このブログでは上記で述べなかった章、

5章 公衆衛生の誕生 について、いくつか引用と、

8章の結核の所も、いくつか引用しましょう。




【黒死病以降、ペストに対抗するために都市には保健所が作られるようになった】





今、どの市町村にもある保健所の出来た背景が、黒死病(ペスト)とは…。

ペスト、

ヨーロッパ全体で3000万〜5000万人の死亡者ということから、

とてつもない感染症だったということはわかるでしょう。

その病の流行をどう防ぐかが、保健所のまず最初の役割だったのです。




【人間も物も、疾病特にペストに感染している恐れがないのか、それを示す証明が必要になった。人用の物と商品用の物の通行証明書が発行されるようになる。さらに所持者を受け入れ、滞在許可を求める文言も付記されるようになり、これがパスポートの原型となった。】




うーん、パスポートもそうなのか………。




【工業都市ないし工業地域における労働者階級の死亡者の平均年齢は、1519歳となっている。】





なぜここまで低くなるのか、

当時の5歳未満の死亡率が57%、というのですから、

もう今の時代に生きていて、本当に良かったと思えてしまいます。

きれいな水を飲む場所はなく(汚れた川からとるしかなかった)

ゴミも近くに捨てていたので衛生状態は最低、

医療もこのような貧困層に全く手が付けられない状態の中で、

感染症が多発するのは避けられない事でした。


このあたりのくだりは、

ブログ管理者としては、

以前ショッキングを受けた「日本残酷物語」以来のものでした。

日本残酷物語は江戸時代、明治時代など、

昔はありふれた光景なのですが、

今から見ると、残酷な光景に見える様々な記録を書き連ねたものです。

この本はかの有名な民俗学の権威・宮本常一や山本周五郎などが書いた名書です。

何冊か(確か5巻まであったのような気が…)


さて話は戻して………、

21世紀の感染症は新型インフルエンザと言われています。

最終章のこの内容を読んでいくと、

ある国単独の関わりではこの感染症を防ぐことは困難で、

世界が手と手をつなぎあって対応しなければいけないことが見えてきます。

これだけ衛生状態が良くなったとしても、

この新型インフルエンザの伝播力は私たちのイメージしているものよりも上回る可能性があります。

是非とも気になった方は、

この本を読んで、せめて気持ちだけでも防御するべし、なのです。

posted by リハ技士 at 18:27| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする