2016年05月04日

医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい

またまた新書の紹介。

医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい

上昌広

講談社+α新書

(2014年7月発刊)


STAP細胞騒動、終わりなき患者のたらい回し、何を信じてよいのかわからない高度医療の実態……、医療崩壊列島ニッポンで超高齢社会を生き抜くための知恵を、「医療ガバナンスの旗手」が授ける。本当に役立つ医療とは? 医療をダメにする本当の「癌」とは? 患者=一般市民だけが知らない「医療の不都合な真実」を糺す!


うーん、この本は部分部分によって、ブログ管理者的には評価が分かれる内容でした(どちらかというと「星一つ」と言いたいものが多かったです)

本書冒頭部分の医療詐欺の現状には、知らない事件も報告されていたので、興味深く読めたのですが、

日本の医療システム批判には納得できないものがありました。

それは2点、

薬価の公定価格の批判、

そして混合診療批判に対しての批判です。


まず薬価の公定価格に関して、この著書はなぜ批判しているのでしょうか。

ごく簡単に言っちゃうと、

企業で作ろうとしている新薬が、中医協などで決めた安い公定価格では、

企業が日本で画期的な新薬を作ろうとするモチベーションがおきず、

あまり開発費のかからない小手先の新薬開発になってしまう、というのです。

しかし…。

全国保険医団体連合会で出している月間保団連の2012年の臨時増刊号の中で、

「薬価の国際比較」というものがありました。

著者の言い方をみると日本はいかに安く価格が設定されているように思いますが、

実際には英国・フランス・ドイツと比較した場合、よく使用される薬剤77の相対薬価をみていくと、

おおむねドイツと比べると1.5倍、ドイツ・英国では2倍であり、日本の薬価は先進国と比べても高いということがわかります。

ゆえに、日本で新薬を作ろうとするモチベーションがおきない、という著者の理屈は、

ブログ管理者には全く同意できないものでした。


混合診療の批判です。

当ブログでは何回も混合診療に関しては強く反対意見を述べてきました、

この本を読み終えてもその意見は変化ありません。

著者は、

昔の航空会社を例に出して反論します。

かなり昔の航空会社は安値競争で疲弊し、破たん寸前のところが多かったと言います、

(そのため機体はボロボロ、安全性にもおおいにもんだいがあった)

しかしビジネスクラスという格差をつけた画期的な制度が、経営的にも安定させ、

かえって経営的に余裕が出たことで安全性のところまでお金をかけ、それを向上させることができた、というのです。

つまり格差も、その格差の在り方によっては、かえってお客さんのためになる………、

医療でも混合診療という格差をつけることで、医療の質を上げていく事なのだと…。

しかし、この方向性の考え方は、危険だとブログ管理者はとらえてしまいます。

まずビジネスクラスでも、普通のクラスでも、

同じ場所に行きたいのであれば、

お金をそれほど持っていない人は、当然安い料金のシートに座るでしょう、

例え、安い料金でもある目的地に行く、ということは問題がなく、

それまでの環境や接待で、まぁいい気分になれるという程度です。

しかし医療は、そもそもその医療自体を安い料金では受けられなくなってしまう、という大きな違いがあるのです。

だまされてはいけません。


あまりお勧めの本ではありませんが、読みやすさだけはなかなかでした、

興味をもったかたはどうぞ。

posted by リハ技士 at 18:22| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月03日

移植医療

今日も新書の紹介。

移植医療

出河雅彦 島次郎

岩波新書

(20145月発刊)


いつものようにこの本の概要を本書から引用します。


【日本の移植医療は、脳死論議ばかりが注目される一方で、本来あるべき包括的法整備がなされず、当事者の保護が行き届かない面があった。現実にどんな問題が起こったか、海外ではどうか、多くの人がより少ない負担で医療を受けられるために考えるべきことは何か。再生医療の展望にもふれた、研究者とジャーナリストがタッグを組んだ一冊。】


「移植医療」という単純なタイトル、

あまり期待して買ったわけではありませんでしたが、「へぇ〜」と思うことが多く、

知的好奇心を大いにくすぐられた本でした。

正直、以前移植がらみの小説をここで紹介したことがあったことから、

単に現在の移植医療が日本ではどのような状況になっているのかがわかればいいや、

という程度の理由で買っていたのですが、

内容的には現在の移植医療の意外な問題点が読み進んでいくうちに浮かび上がっていき、

読むのがやめられなくなっていました。


まずブログ管理者の日本の移植医療のイメージは、

世界的にはかなり移植医療は遅れているというものでした。

確かに脳死後の臓器移植は先進諸国と比べても、競争にならないほど少ない件数になっています。

しかし、です。

生体(つまり生きている人)での移植はフランスやアメリカなどと比べると圧倒的に件数でも割合でも高い値を示しています。

つまり生きている人からの提供は、身内を救う尊い行為として歓迎されているのです。

そうであれば、きちんとした管理があるはずですが、なんと…、

脳死の移植と違って、臓器移植法にはなんの規定もなく、公的な管理もされていないという指摘がされていたのです。

特に公的管理がなされていないことには、ブログ管理者にとっては驚きでした。

移植医療につきまとう一番のもめごとは、臓器提供者はその提供を強要されていないのか、というものがあります。

実際にこの関係でのトラブルは諸外国ではよく聞く話です。

きちんとした倫理にもとづいた移植がなされているのか、管理する仕組みが必要という著者の指摘はもっともだと思いました。

また同じような問題点としては、

臓器以外の移植、皮膚・骨・臓器の一部についても、これもまた、なんと規定がないのです。

ニュースには出ない水面下で、

もしかして、

倫理に劣るような人たちが暗躍し、違法な組織売買をし、移植をさせていたとしても、わからない状況なのです。


ここまでくると頭のさえないブログ管理者でも臓器移植法は、まだまだ不十分な法律であることがみえてきます。

1997年 臓器移植法施行、2010年改正臓器移植法、

1997年と2010年での変化した一番のポイントは、臓器提供に関して本人の書面での意思表示が必要だったものが、

本人の意思が不明な場合は家族の同意でもよくなったこと(+15歳以下でも脳死臓器提供OK)でした。

本書の指摘は、その以前の改正ポイントよりも根本的に重要な指摘です。

早く更に法改正すべき、そう感じさせた本でした。

posted by リハ技士 at 16:03| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月02日

科学はなぜ誤解されるのか わかりにくさの理由を探る

今回も新書の紹介。

科学はなぜ誤解されるのか わかりにくさの理由を探る

垂水雄二

平凡社新書


本書においてこの本の概要が書かれているところがあったので、引用します。


【ダーウィンの「進化論」も、ドーキンスの「利己的遺伝子」も、世に知られる理論だが、一般の理解には、ちょっと怪しいところがある。根幹理論ですら、誤解含みで理解されることが多いのは、なぜか?大雑把で、都合のいい理解が得意な人間の「知覚」と、言葉による「コミュニケーション」の難しさに焦点をあてながら、科学をめぐるディスコミュニケーションの現状を論ずる。用語に秘められた危うさと魅力を科学コミュニケーションから読み解く。】


正直、科学コミュニケーションについて、知りたくてこの本を買ったのですが、

それについての定義・詳しい説明はなく、

またその科学的コミュニケーションをうまくできるコツなどの記載もなく、

最初から科学的コミュニケーションを損なう要因から始まっています。

(科学的コミュニケーションを簡単に言っちゃうと、

科学者がうまく一般の人たちに科学のことをわかってもらうために行うコミュニケーションのことを指す、のだと思います)

まぁ、しかし科学的コミュニケーションがうまくいかない様々な事例の報告や分析、

そして人はいかに間違うかなどの報告、

つまり科学的コミュニケーションがうまくできない負の部分を見つめることによって

本書は科学的コミュニケーションとは何か、ということを明らかにしようとしているように読みました。


まず気になったのは「比喩的表現の功罪」という章です。

ブログ管理者もかなり難しい内容を説明するときに、

時にわかりやすい例を出そうとして比喩的表現を使用したりします。

しかし、本書では、このような比喩の使用は、人によって誤解を受けてしまう可能性があるという指摘………。

ブログ管理者も比喩の使い方も含めて、書き方に注意しなければ…、と感じてしまいました。

もう一つは「感じたことが事実とは限らない」という章。

他の人に話すときに教科書的な知識の羅列よりも、

自分が体験したことや感じたことをうまくからめて報告した方が、

話を聞いている受け手の人たちにはわかりやすい場合があります。

しかし世の中には、自分がそう感じたから、この事実は間違いないと言い切ってしまう人たちがいるのが厄介です。

本書では、人間の知覚がいかに大雑把であり、ありのままには感じていないということが語られていきます。


この本、1章〜3章はところところ難解だったので少しだけ斜め読み、

4章・5章(特に5章)は難解だったので、斜め読み中心の読み方をしてしまいました。

おそらく著者としては、

わかりやすさも考慮に入れたのでしょうが、

この本のテーマはいかに誤解されないように、というもの?なので、

なるべく正確に書いたようで、

きちんと読むとするとブログ管理者は気が遠くなるようなレベルになっていました


リハ技士が例えば退院後のありかたなどで本人や家族に説明する(指導する)場合は、

本人がイメージしやすい実際の生活であったり、社会参加の場というものを使用して説明するのが普通です。

なので比喩表現するような機会はなく、

より直接的な表現で説明することになり、誤解を受けることはまずないでしょう。

問題は機能面に対しての特別な理論を使用した治療法の場合です。

この時には、確かに誤解を受けない程度で、わかりやすい説明が必要になってきます。


またリハ技士単独の経験談を押し付けることもリハ分野では本来起こらないはずです。

患者・家族の価値観をふまえて、医師・看護師などと協業していけばいいのですから。

しかし、その協業がうまくできておらず、

リハ技士単独でリハのことを語っている場合は、

かなり???のリハを行っているところと言えるでしょう。


次回も新書の紹介を行います。

posted by リハ技士 at 19:57| 山形 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月01日

体内時計のふしぎ

前回に引き続いて、新書の紹介をします。

体内時計のふしぎ

明石真

光文社新書

(201312月発刊)


この本の概要が書かれている文章がこの本にあったので、引用します。


【ガンや糖尿病などの現代病の病は、「遺伝子要因」と「環境的要因」に大別できる。特に多様化する現代疾患は、環境的要因による影響が大きいと考えられている。この環境的要因の大きな一つとして、本書では現代特有の時間的環境と体内時計の関係にちゃま目する。

「体内時計」とは、体の種々の機能や現象において、約24時間のリズムを発生させる生体機能を指す。最近、この体内時計と健康との関係が次々と明らかにされ、注目を集めている。病気のリスクを高める「24時間社会」に生きる私たち現代人は、どうすれば心身の健康を保つことができるのか。

最新の研究成果から、個々人が自分の身を守るためのヒントを示す。】


前回、遺伝子の本を取り上げましたね。

遺伝子を知ることで、どのような病気にかかりやすいのか、

また遺伝子を知ることで、当たりはずれのない薬の効果をえたりなど、

画期的な遺伝子治療と、その発明で巨額の儲けが期待できることでの利権の争いを述べてきました。

今回の環境的要素に対する研究も、

遺伝子治療ほどあまり注目はされていないものの、

遺伝子治療と同等、もしくはそれ以上に重要な医療効果を得られるものと感じる本書の内容でした。

本書はその環境の一部、体内時計に焦点があてられています。

この本を読んでの素直な感想としては、

やはりきちんとした秩序ある生活リズムで食事や睡眠などを行うことが健康の基になっているという再確認でした。

そのような再確認が、「体内時計」というキーワードが使用され、本書でわかりやすく説明されています。

その説明のごく一部を説明しましょう。


本書では体内時計のくるいが様々な疾患に関連することを説明していきます。

ここでは第2型糖尿病を例に出しましょう。

インスリンの効き、これには1日のリズムが存在します、

つまり通常摂食する昼間はインスリンの効きがいいのですが、

夜間のインスリンはよくないのです。

人間の進化を考えてみれば、これは当然なことでしょう。

これだけ科学技術が進歩し、夜間に様々なことができるようになったのは、

200年以上もたっていない話です。

夜中に食事をしないという、今までの常識は体のプログラムに刻み込まれたものなのです。

そして第2型の糖尿病の人で、夜型の生活をしている人が多いという事実…。


私たちリハ技士は、環境面の評価やアプローチを当然行っています。

その環境要素として時系列に考えていくことも、頭の中に当然入っています。

朝・昼・夜の活動状態(+機能面)をふまえた上で、

看護・介護と協業しながらADLの自立を目指していくのです。


血圧・意識・感覚などなど、時間によってどう変わっていくかという科学的な知識を持ったうえで、

患者さんと向き合う、本書を読みながら、ついついそう考えていました。

posted by リハ技士 at 14:35| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月29日

人体特許 狙われる遺伝子情報

相当久しぶりの新書紹介。

人体特許 狙われる遺伝子情報

五十嵐亨平

PHPサイエンスワールド新書

(2013122日発刊)


この本を読むと、まず様々な病気が遺伝子に大きく関連していることが多いこと、

そして、その様々な遺伝子を発見する争いで、

現在様々な利権が動いていることに目を見張りました。

作者はNHKディレクター、

数々の賞を受賞したことがあり、

今回、本のタイトルともなった「人体特許」はNHKスペシャルで放映し、

これも賞を取っています。


この本で何度も出てくるのが、「特許」。

この特許の申請を巡ってアメリカでは様々な裁判になっていて、

この遺伝子関連の特許戦争も、本を読んでいくとなかなかのものだと感じます。

ブログ管理者にとって、その説明された内容はやや難解だったので、うまく説明できないのですが、

企業が遺伝子特許をとることで、莫大な利益を出し、儲けることができることは理解できました。

ただその特許を取ることで、

他の企業がその特許に少しでも関係している薬剤や治療法を開発する際に、

大きな障壁になることも指摘されていて、

逆に医学の進歩を止めている、ということも理解できる内容になっていました。


この本を読み進んで心配になってくるのは、TPP

このTPPは幅広い分野の貿易について秘密裡に話し合いが行われましたよね。

そのうちの知財分野においても、このような特許の在り方が話し合われ、合意されています。

ブログ管理者は、その結果が書かれている内容を探すために、ホームページで検索しましたが、

ごく簡単なものはみつけましたが、詳細な内容は見つけられていません。


iPS細胞を発見した山中先生は、特許は取りましたが、

他の人がそれを利用する場合でも非常に安いライセンス料を設定し(なんと公的機関であれば無料)

医学の進歩のためにチャレンジしていきたい研究者を支えているのです。


TPPは自由貿易を促進し、力強い経済成長を作るため、と言われています。

つまり企業が動きやすい社会を作る、ということです。

しかし今回の特許の問題も含めて、企業のいいようにしていけば、

いい方向に行くとは限りません。

もしかしたら、今回のように、様々な分野の質を下げていく(後退)ことになっていくかもしれないからです。


今後の遺伝子ビジネス・TPP

どちらも皆さん注目なのです。

posted by リハ技士 at 14:30| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする