2015年04月15日

高次脳機能障害を体験して 病識について

317日の抄読会、STの報告。


高次脳機能障害を体験して

言語聴覚研究


自分自身(著明なST)の高次脳機能障害の事例報告というなかなか珍しい報告。

評価の具体的内容、そして治療経過が語られますが、

このブログでは考察2点の1点を引用したいと思います。




【筆者は発症前から高次脳機能障害に関する知識を有しており,出現した各障害を自覚し自分の病的状態への気づき(病識)があったために,意識して何らかの対応ができた結果,急性期中に大半の障害が軽症化あるいは消失した.一方,筆者が出会った多くの高次脳機能障害者は発症前から知識を有しておらず,発症時には自分の身に起きたことを理解できず大混乱に陥っていた.例えば失語症者の場合,直前まで自由に操っていた言語が発症と同時に機能低下したことを理解できず,困惑したり,怒りを感じたりすることが多い印象で

あった.無視患者も同様で,経過中,無視症状について医療者から説明を受け衝撃を受けている場面に何度か遭遇した.

 多くの人は知識が不足しており自分を客観視できないので,病識も持てない.病識がないと,回復したいという気持ちも生じないのでリハピリに前向きに取り組むこともできないであろう.高次脳機能障害のリハピリにおいて,病識の有無は予後予測要因として極めて重要と思われる.無視患者,病態失認・ウェルニッケ失語症・盲視を示す脳損傷者,社会的行動障害を抱える脳外傷者の中には病識低下の状態がしばしばみられる.

 病識が保たれている場合には,望ましくない症状が出そうになったときに意識して抑制する必要がある.筆者の場合,望ましくない症状には無視が該当する.筆者は左側への注意が不足しがちな自分の病的状態に気づいており,左方に注意を向ける練習をひたすら繰り返して改善に努めた.その結果,前述した通り,初回検査にみられた無視は1週間後の再検査時にはみられなくなった.以上の経験から,筆者は知識・病識・意識が高次脳機能障害改善の鍵と考えるようになった.】




なんとBITの作成に関わったSTです。

どのような人でも病気になれば、高次脳機能障害にもなりうるはずです、

しかし、このような高次脳機能障害の権威にも、

当然高次脳機能障害になったという現実、運命のいたずらかと感じてしまいます。

あとそのような方の高次脳機能障害に対するリハ技士は、

かなり緊張したことでしょう、

リハの教科書を書いているレベルの人にリハを提供するのですから…。

また、脱線しましたね、失礼猫


この論者は病識の重要性は以前から十分に知っていたはずです、

しかしそれでも自分の体験から、

その病識の重要性を自分や他の患者と見比べて更に強く実感したのだと思います。

皆さんも字面的には病識の重要性は知っているはずですが、

その重要性は皆さんが考えているよりも、もっと大きなものかもしれません。


では、それをもとにどうその病識の弱さを支援していくアプローチができるのか、ということになります。

なかなかそれに、「これだexclamation×2」と思えるような答えはありません。

あえて言うならば、まずリハ技士とのいい関係性をまず築くこと、

なぁーんだ、そんな答えか、と言われそうですが、

まずこれをきちんと成立させてなければ前に進みません。

そしてまず本人のできる活動から、リハを提供すべきです。

このような人は物語「北風台風と太陽晴れ」からの教訓にもあるように、

まず自らが動こうとする気持ちを出させるような環境にしていくべきと考えます。

北風のように、本人の思っていることを否定するような話をすることや体験をさせることは、

その人を混乱させ、情緒を不安定にさせることだと考えます。

そして少しずつなかなかできない活動を段階的に体験させていきます、

ただ言葉だけで説明するだけでは、患者さんはそれを表面的に言葉だけを覚えるだけで本当に理解していない場合があります。

言葉も添えながら適切な体験をしていくことで、

言葉の記憶から、その体験の問題を理解までもっていくことができるのだと思います。

それができるようになっていけば、次の段階、

現在の身体状況からくる問題以上のこと、

つまり将来のことまでふまえて考えられるようになっていくのだと思います。


ここで、

「じゃっ、適切な体験って、何をすればいいの」という質問が来そうです。

これこそ、答えられればいいのですが、

正直、その人の前で試行錯誤しながら対応しているのが現実です。


皆さんも、おそらく病識のない患者さん、利用者さんで苦労されているのではないでしょうか。

posted by リハ技士 at 16:11| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 抄読会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月14日

高齢者の肺炎の実態と内科的治療

抄読会、ためていました、連日何個か紹介していきます

310日にあった抄読会


「高齢者の肺炎の実態と内科的治療」

総合リハ・第432号・959820152


その報告では、

はじめに

高齢者肺炎の実態

高齢者肺炎を理解するための誤嚥性肺炎の分類

高齢者肺炎の症状と診断のためのサイン

胃切除後誤嚥性肺炎に代表される高齢者肺炎の背景となる疾患の重要性

高齢者肺炎の治療

高齢者肺炎の原因、誘因としてのウイルス感染の重要性とその対策

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインの今日的意義

という構成になっています。

このブログではこの論文の「高齢者肺炎の実態」を引用します。



【肺炎は、過去20年間死亡者数が増加し続けており、全死亡原因の第3位になった。しかし、肺炎自体の死亡率は改善の傾向にあり、治療成績が悪いわけではない。実数として肺炎死亡が増加している理由は、肺炎死亡率が高い80歳以上の肺炎罹患者の総数が増加し続けていることがある。その結果、肺炎が、死亡原因として2011年統計以降、脳卒中を上回り、第3位になったのである。

 特に医療施設における入院肺炎患者の実態は、大きく高齢者に傾いている。肺炎入院患者の多くは、70歳以上であり、入院する肺炎患者は高齢患者が大半を占めている。

 この高齢者肺炎は病因論的には、誤嚥性肺炎が多くを占める。病因論的にという意味は、通常肺炎は、市中肺炎(community acquired pneumonia;CAP)と院内肺炎(hospital acquired pneumonia;HAP)という2つの分類しかなく、肺炎の発生場所が病院内か病院外かで分類されており、どのような仕組みで肺炎が発症したかは、考慮されていないからである。われわれの調査では、入院症例のCAPで約6割、HAPでは8割以上が誤嚥性肺炎と診断し得ることが示された。

 誤嚥には、食事をむせて誤嚥する場合や食事と関係なく唾液を誤嚥する場合などがあり、誤嚥の病態、内容も多岐にわたる。感染症としての肺炎を起こす誤嚥は、食事の誤嚥よりは細菌を含む唾液などの分泌物を夜間に無意識のうちに誤嚥する不顕性誤嚥が原因になる場合が多い。しかし、食事の誤嚥によっても、特に油を含むものや粘稠度の高いものでは下気道定着菌による肺炎を発症する場合があり、食事の誤嚥も問題であるそこで嚥下障害を来す病態をよく知っておく必要がある。】




もう皆さんのところでも、

嚥下障害と肺炎には強い結びつきがあることは、様々な論文等でよく知っていることかもしれません。

病院だけでなく、介護施設でも、

そのことを理解しているために口腔ケアに力をかけている所が増えています、

また診療報酬でも、介護報酬でもそのような口腔ケアに加算がついています、

肺炎予防だけがその目的ではありませんが、

国としてもその認識をもっているあらわれです。

当然口腔ケア以前に摂食嚥下障害を適切に診断し、治療することも求められているので、

その加算も当然ついていますよね。


当院はその嚥下障害診断・治療には、実績を積み重ねてきました。

その中心的な存在だった福村医師はいなくなりましたが、

その知識・技術は他の医師・看護師・言語聴覚士などに引き継がれています。

当院においても、その知識・技術を地域に更に広め、

地域内の肺炎発生率を高めないようにできればと考えます。

posted by リハ技士 at 20:48| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 抄読会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月16日

筋力低下

33日の抄読会、OTの報告。


筋力低下

総合リハ・4211号・201411

池添冬芽


この報告では歩行自立群の高齢者と歩行困難群の高齢者を比較し、

体幹の筋肉はどこが筋委縮しているのか、

下肢はどこが筋委縮しているのかを超音波診断装置を利用して報告されます。

その結果から介護予防のためにターゲットにする筋として…。




【高齢者の介護予防を目的とした筋カトレーニングを処方するうえでは,特に高齢者の日常生活動作能力や生活活動量と関連の深い筋や加齢による萎縮が著しい筋を中心に筋カトレーニングを実施することが重要であると考える.前述したわれわれの筋萎縮に関する研究結果から考えると,歩行能力の維持向上あるいは歩行能力低下の予防のためには歩行困難になると萎縮がみられる大腿四頭筋やヒラメ筋,起居移動動作能力の維持向上や寝たきり予防のためには体幹深部筋(多裂筋・腹横筋),生活活動量の維持向上のためには中殿筋アンチエイジングのためには加齢による萎縮が著しい大腰筋や腹斜筋をトレーニングすることが有用と考える。】




もちろん個人差はあるので、本来は個別の評価は必要でしょうが、

集団での介護予防指導であれば、今回の筋のターゲットは参考になると思います。


ちなみにこの論文で、高齢者に対する筋力トレーニングの処方が書かれています。

これも引用します。




【運動強度

 ・高齢者においてはBrogのスケールで13「ややきつい」程度が目安

 ・運動に慣れるまでは運動量や強度は低く設定する

 ・「ややきつい」程度の運動となるよう徐々に負荷を漸増させていく

 ・運動後に関節痛や腫脹・熱感、3日以上続く強い筋肉痛がみられる場合は運動強度を変更する

 ・炎症症状や神経症状を有する場合は負荷をかけた筋カトレーニングは避ける

運動頻度

 ・高強度であれば週23日、低強度であればそれ以上の頻度が効果的

 ・週1日でも筋力維持効果は期待できる

 ・10回反復を1セットとし,23セットを目標にセット数を増やしていく

運動速度

 ・きわめてゆっくり反動をつけないように運動を行う

 ・おもりを持ち上げるとき、下ろすときはそれぞれ46秒かける

 ・血圧上昇防止のため,息をこらえないようにできるだけ声を出してカウントしながら行う】




毎日やらないとこのようなトレーニングは効果がないと思っている人たちも多いのではないでしょうか。

1回でも効果は期待できるというのは、

そのトレーニングのハードルをさげることにつながり、

やってみようと思う人もいるかも…。

まぁリハ技士には常識的な内容を含んでいるかもしれませんが、

参考にしてください。

posted by リハ技士 at 20:18| 山形 | Comment(0) | TrackBack(0) | 抄読会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月19日

薬について

23日に行われた抄読会、PTの報告。

薬についての報告。


その報告された文章の中から1つだけ引用します。



【通常は気づいた時点で服用するが、飲み忘れに気づくのが遅れ、次の服用時間が近い時、1回分は飲まずに次の分から飲む。次の服用時間まで気づかなかったときは2回分まとめて服用はせず、1回分だけ服用する。

 食事の直前に飲む糖尿病の薬や、起きてすぐ飲む骨粗しょう症の薬など効能上、飲み方を特に気をつけないといけないものもある。飲み忘れたときの対処方法を医師、薬剤師に確認しておく。

 食事をとらなくても服用できる薬もある。薬の種類によって効力が違うのでこの点も確認が必要。

 自覚症状がない病気の場合、うっかり飲み忘れることがあるかもしれないが、症状がなくても身本の状態をコントロールしたり、発作などを予防するために飲み続ける必要がある薬もある。飲み忘れが気になる方にはお薬カレンダーや1回分ずつ袋にまとめてパックする一包化も勧めている。】




この報告をしたのは訪問リハを行っているPT

おそらく在宅で薬の飲み忘れがあったりして、

患者や家族からリハ技士も同じ医療者だということで相談があったのだと推測します。


また在宅だと、医療関係者が常にそばにいるわけではないので、

薬剤の効果や副作用がどのような状況かを随時把握することができません。

薬剤が日常生活に影響を及ぼす事も稀ではないでしょう、

そのようなこともあるということをリハ技士は理解して、

場合によっては医師に、生活に影響があるという情報を流す必要がでてきます。

posted by リハ技士 at 19:47| 山形 ☔| Comment(3) | TrackBack(0) | 抄読会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月10日

障害者に対する運転リハビリテーション総論

今日の抄読会、OTの報告。

「障害者に対する運転リハビリテーション総論」

作業療法ジャーナル 49(2):9499


今回の報告で注目したのは「運転行動のモデル」です。

5階層モデルで、

戦略レベル 運転目的と工程の計画、到着の予測

戦術レベル 時刻、場所等の工程のモニタリング

マニューバ(行動)レベル 車線・車間の維持、追い越しの実施等

操作レベル ハンドル・ブレーキの操作

運動感覚・知覚レベル 速度の判断、前車との距離感等情報の統合


熟練者は戦略レベルや戦術レベルに注意を払い、

運転感覚・知覚・操作レベルはそれほど注意を払いません。

初心者は行動レベルや操作レベルに注意を払い、それ以外はその注意の配分は弱くなります。

ここで収穫だったのは、

当院での自動車運転評価は行動レベル・操作レベル、運転感覚・知覚レベルだけだったことです。

様々な高次脳機能障害を持つ人の中には、この戦略・戦術レベルの障害の方も出てくるかもしれません。

特に車の運転を仕事をする人には、この戦略・戦術レベルの評価が必要になってきます。

ただ実際にどう評価していくかということは大きな課題にはなっていきます。




【中途障害等で現有免許に対する適正に疑問がある場合は適性相談を受けるよう広報されているが、罰則がないため運転を再開してもそのこと自体では処罰されることはない。ただし、自動車等の運転者には道路交通法第70条により安全運転の義務があるため、自身の運転適性に問題があると知った上で重大事故を起こした場合は、何らかの処罰がなされる可能性も否定できない。】




また最近(2013)は道路交通法改正で免許更新時に、病歴などを確認するような質問票の提出が義務化になったので、

これに違反すると1年以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金に処せられることになりました。

このことからなかなか病気を隠して、免許の更新はやりづらくなってきています。

その帰結として本当に運転が大丈夫なのかどうかという病院への評価依頼が多くなることが予想されるのです。

posted by リハ技士 at 20:06| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 抄読会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする