2013年10月08日

健康の社会格差の対策

健康の社会格差シリーズ、
提言はまだ続くのですが、今回はこの程度にして、とりあえず最終回にします。

健康の社会格差の対策
『英国、スウェーデン、韓国などでは、政府として健康格差是正の数値目標を掲げ、公衆衛生法の改正などを行って、健康の社会格差の対策に政府として取り組んでいる。米国でも国立研究機関が医療の社会格差の報告書を出すなどの取り組みを進めている。これらの国で取り組みが進んだ背景には、社会階層が高い者に比べ低い者が不健康という「健康格差」が数多く観察され、医療へのアクセスが不良で死亡率も高く、その背景に社会経済的格差が関与しているという研究の蓄積がある。一方、わが国では、健康の社会格差は政策上の重要課題には位置づけられておらず、またその改善方策に関する研究はほとんど行われていないのが実情である。』
(提言 わが国の健康の社会格差の現状理解とその改善に向けて から引用)

2009年にWHOが健康格差の是正を各国に対策を勧告するなどの動きがありました。
この提言もそのWHOの勧告に則ってまとめた提言でしょう。
このような世界的な動きにやっと日本も動き始めました。
2012年に厚労省は拡大する健康格差があることを認め、
英国や韓国のように数値目標を掲げたのです。
厚生労働省の専門委員会における「国民健康づくり運動プラン21」に、
初めて所得や地域等の健康格差があることが明記されています。
具体的には素案では、
「日常生活に制限なく活動できる期間」や、「自分が健康だと自覚している期間」について、
都道府県の格差を縮小することを目標としました。
(男女ともに健康寿命が高いのが千葉県と静岡県、男女でともに健康寿命が低いのは大阪)
そしてその大枠の指針として「生活の質の向上」「社会環境の質の向上」を挙げています。
まずは一歩前進と言えるでしょう。

次回から、新シリーズ、「今年の理学療法国家試験にチャレンジ」です。
お楽しみに。
posted by リハ技師 at 15:21| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月07日

医療アクセスの格差

健康の社会格差シリーズ。

『非正規雇用の者では社会保障制度に加入していない場合が多く、医療アクセスに支障が生じる可能性があると指摘されている。』
(戸田典子、「非正規雇用の増加と社会保障」、レファンス No.673:21-44)

医療アクセスは世界的には見れば恵まれている方でしょう。
しかしこの非正規雇用の増加で少しずつ悪化しているようです。
日本女子大学の岩田論文によると、
『医療保険や年金保険にあっては、労働者として適用されるには、雇用保険より厳しく「常用的」であることが求められるため、多くの非正規労働者はここから排除される。しかし、国民皆年金・皆保険体制の下では、これらの非正規労働者は、保険料を労働者のみが負担して、国民年金・国民健康保険へ加入することが想定されている。』
と報告されています。
あるメディアでは、
アベノミクスは、失業率は減らすだろう、
しかしそれは非正規雇用を増やすだけであり、
賃金はあまり上昇しないのではないかと、でていました。
もし仮に今回のアベノミクスが非正規をただ増やすだけの結果になるならば、
景気は良くならないですし、
医療アクセス格差は広がっていくでしょう。
アベノミクスがどうなっていくかは全くブログ管理者には予想が付きませんが、
上記のようにならないことを祈るしかありません。
posted by リハ技師 at 19:29| 山形 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月04日

高齢者の社会格差と健康

健康の社会格差シリーズ。

高齢者の社会格差と健康
『わが国の高齢者において、死亡率、主要疾患(がん、脳卒中、高血圧などの頻度、要介護状態やそれをもたらすリスク(転倒、低栄養、口腔機能など)、主観的健康感、抑うつなど精神的健康、社会的活動(閉じこもり、社会参加、社会的サポート、虐待など)など様々な健康の側面に社会経済状態による格差が存在すると報告されていた。』
(提言 わが国の健康の社会格差の現状理解とその改善に向けて)

私たちが特に高齢者での格差で感じてしまうのは、
被災地の高齢者のことです。
(ブログ管理者は高齢者の格差も切実な問題とは思われますが、
被災地とそれ以外の地域格差の方が根は深いと感じています)
今年の4月の朝日新聞の記事でしたが、
岩手県沿岸部の人たち、
震災直後から1年と、
その1年から10カ月では、
脳卒中がなんと5倍に増えているという結果が報告されたのです。
その他、容易に想像がつくのは、
避難が長期化、もしくは避難を繰り返している福島の高齢者はもっと厳しい環境であるということです。
今年3月のデータでの震災関連死は宮城県の1.6倍、岩手県の3.56倍となっています。
(震災関連死は70歳以上が9割)
被災地だということ、そして原発事故の影響という特別な要因もありますが、
他の地域と比べて大きな格差があると言わざるをえません。
このような健康被害の格差だけでなく、
土木以外の企業業績の不振など、様々な地域格差は依然大きく残ったままです。
その意味においては復興における様々な施策の後退はありえないと思われます、
特に今回、復興特別法人税の廃止というのは、
ブログ管理者にとっては巨大な?マークが頭の上を離れません。
posted by リハ技師 at 18:15| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月01日

労働者における社会格差と健康

健康の社会格差シリーズ、

労働者における社会格差と健康
『1980年代前半には非正規雇用(パートタイム、有期雇用、労働者派遣、アルバイト等)の全労働者中に占める割合は15%前後であったが、現在では35%強まで増加している。2009年の調査では、男性正規職員の平均収入を100とした時、女性正規職員のそれは約70であるのに対し、非正規雇用の男性では57、女性では42と極端に低く、この差はOECD諸国の中でも極めて大きい。海外の調査では、非正規労働者は正規労働者と比べて死亡率や労働災害による疾病率が高いとされている。』
(提言 わが国の健康格差の現状理解とその改善に向けて から引用)

この本文の後に日本での正規雇用、非正規雇用での違いが健康に与える影響も書かれています。

ここまできて貧困になってしまうのは「自己責任」ではないかという批判も出てくるかもしれません。
私はごく簡単にではありますが、この自己責任には次のように考えます。
自分の行ったことには多かれ少なかれ責任が伴います。
それを全否定する人は自己責任論批判派でもいないとブログ管理者は考えています。
これは至極当然の考え方です、
それが否定されれば。
何事も行ったことに対しての反省がなくなり、
それに伴って行動に対して改善して動くということは、なくなるからです。
しかしこの自己は全く社会から切り離された「自己」ではありません、
多かれ少なかれ、社会から大きな影響を受けます。
リハの世界でも患者さんの機能面や能力面の評価だけでは、
帰ってからの生活を見通した評価になっていないことを新人指導などで伝えることがあります。
抜けている情報が患者さんの背景、
例えば家族関係、家屋状況、経済状態だったりします。
このような背景をふまえないと、
患者さんの全体像を理解するということは出来ないでしょう。
その意味では、
リハの世界において、
患者さんを理解する時にその本人そのものだけを分析することがない事と同様に、
自己責任論においても
自分の行ってきた事は、その自分だけの責任にするということも当然ないと言えます。
多くは、
この結果は自己責任だ、いや全く自己責任ではない、という両極端な事ではなく、
その間にあると思うのです、
自己責任もあり、社会の問題もあるのです。

しかしその社会が二極化しています。
勝ち組、負け組という言葉もおなじみの言葉になってしまいました。
非正規雇用が現在日本では1/3強もいるという実態は、高度成長時代には考えられなかったことです。
総中流と言われていた「日本」は、別な「ニホン」に大きく変化していったのです。
その大きな変化をふまえた上で、人を評価していくことが重要なのではないでしょうか。
posted by リハ技師 at 19:03| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月26日

子どもにおける社会格差と健康

健康の社会格差シリーズ、

健康の社会格差の論点は3つ挙げられていて、
2つ今まで述べてきました。
3つ目の論点はかなり2つの論点と重複する点もあったので割愛します。

今回は健康の社会格差の現状 子どもにおける社会格差と健康についてです。
『家族・家庭や社会の環境は、子どもに様々に影響すると考えられる。海外では、家庭の貧困、低い社会経済状態の地域に居むことが子どもの健康に影響すること、社会経済状態が低出生体重や子どもの幼少期の栄養状態に影響し、その後の健康に関連することが報告されている。』
上記の論文のあとに日本のこの手の論文が少ないこと、
しかし少ない中にも格差がある報告があること、
そして2010年7月に出された「日本の子どものヘルスプロモーション」という報告を紹介しています。

先月の読売新聞の記事でも、上記のような内容を読みました。
内容は国立社会保障・人口問題研究所の検査において、
2001年に生まれた子ども約5万人を対象に、7年間のデータを分析し、
子どもがいる家庭を貧困層と非貧困層に分け、
毎年の入院の有無、ぜんそくやアトピー性皮膚炎など
六つの慢性疾患の通院の有無を比較したものです。
その結果、2歳時点で貧困層は非貧困層より1.3倍も入院する危険性が高かく、
ぜんそくによる通院割合は1歳時点で貧困層が非貧困層より1.35倍高いという結果になりました。
また、3歳時に入院経験のある子どもが6歳時に入院する確率は、
所得が低いほど高く、
過去の病気の影響をその後も引きずっていることも示唆されたのです。

子どもたちは生まれて数年で、
環境要因によって健康を害する人たちが多いというこの結果、
深刻に受け止めなければいけません。
格差論でよくでてくる自己責任論、
しかし、これは自己責任論を強調して述べる人でも、
この子どもの健康格差は非常に問題があることは認識せざるをえないでしょう。
無垢で社会的な対応力のない子どもには自己責任を問う事は当然できないからです。

次回は、労働者における社会格差と健康について、です。
posted by リハ技師 at 21:54| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月24日

全体的な健康格差の広がり

健康の社会格差シリーズ、
健康の社会格差に関する論点2

『社会経済的な状態による階層化が進むことにより、貧困層や低所得者層に限らず、社会階層全体を通して階層による健康問題の格差が生じており、またその格差が拡大しているのではとの懸念である。従来の健康診断や介護予防事業などの保険医療福祉サービスは、学歴の低い者や所得の低い者に届きにくいという懸念もある。』

社会階層全体に格差は生じているのか、
貧困層や低所得者層に限らないということなので、
高所得者層と平均レベルの中間層においても拡大していることを懸念しています。
当法人が加盟している民医連が出版している「民医連医療」10月号に、
日本福祉大学の近藤克則さんの論文がでていました。
タイトルは「健康格差社会への処方箋」、
その中にこのような記事をみかけました。
『世間から見れば失業の心配がない、安定した仕事と見られている公務員の中にも、職業階層によって、いわゆるキャリアとノンキャリアでは健康格差があるということが日本でも確認されています』
健康格差はあらゆるところに生じている可能性は高い、ということがわかってきます。

しかしやはり問題は低所得者層・貧困層です。
そのような層の健康診断はどうなっているのでしょうか。
健康診断は会社で行うようなものは強制力がはたらくため受診はされやすくなります、
しかし、内職であったり、自営業者であれば、自らが健康診断にいく必要がでてきます、
これには高い意識がないと、健康診断を受けることはなかなか難しいことだと思われます。
また働いている人でも、最近よく聞こえてくるブラック企業では、
会社の義務といえる健康診断を行わないところもあると聞きます。
つまり低所得者でも健康診断が強制されない場合は、
健康診断が行わない場合があり、
それが健康格差を引き起こしている可能性が高いという事が言えると思われます。
posted by リハ技師 at 16:40| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月20日

低所得者 医療が受けられない?

健康の社会格差シリーズ4回目、
「提言 わが国の健康の社会格差の現状理解とその改善に向けて」から引用

健康の社会格差に関する論点、3つ挙げられています。
今回はその一つ。
『貧困層や生活保護地帯が増加している現状を背景として、低所得者層において健康問題が集積するとともに、こうした層が最低限の保険医療福祉サービスをうけられなくなっているのではとの懸念である。たとえば低所得者が、自己負担分の支払いが経済的に困難なために医療を受診しにくい可能性がある。特に世界的な金融危機、経済不況は、多くの国民の生活を経済的に困難となる方向に変化させている。こうした急激な社会的変動の下で低所得者層の人々の健康をどう確保するかは緊急の課題である。』

実際にそのような事例は数多くあります、
当事業所においても医療費を払えない状況の人達が入院することがあります。
当法人ではそのような人に向けて無料・低額診療を行っています。
当法人の無料・低額診療を紹介するパンフレットから、
なぜこのような事業に取り組んできているのかが書かれている文章がありますので、引用します。

『日本国憲法は第25条で、「@すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と国民の生存権と国の社会保障的義務を定めています。
 しかし、現実には一部の医療負担筋が払えないために診察を受けることができず命を落としたり、症状を悪化させたり、治療を中断しなければならない人々が増え続けています。
 生活費には程遠い年金しか支給されない高齢者、真面目に一生懸命働いても生活保護基準以下の収入しか得られないワーキング・プアの増加に向けて、アメリカ発の世界恐慌が広がる中で、若者までもが解雇され住む場所を追い出される事態となっており、このまま放置すれば住民の健康と命は一層深刻な事態に追い込まれてしまいます。』

この無料・低額診療は山形県だと、
当法人・医療法人健友会・医療法人柏松会になります。
皆さんの都道府県にもあると思います、ご確認ください。
posted by リハ技師 at 11:46| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月17日

格差に対する国民の意識

健康の社会格差シリーズ3回目、

『最近(2008年)の調査でも約半数の国民が(ブログ管理者注:「収入や財産の不平等が少ない」について)「満たされていない」と感じている。』
(このデーターは内閣府で出された「平成20年度国民選考度調査」を参考にしていました)

この半数が満たされていないになったのは1987年、バブル景気が始まった頃でした。
それ以降は、約5割付近で高止まりしています。
日本全体が総中流と言われた頃と違い、
中流だと思わない人が多数になっていることは強く認識しなければいけません。

ここでこの平成20年度国民選考度調査において、
年齢別(例:20代、30代など)にすればもっと特徴的な結果が出たのではないかと推察します。
前回のジニ係数でも明らかになったように、
若い世代ほど格差は広がっていることが推察されます、
ゆえに若い人ほど「満たされていない」と感じる割合は5割よりも、
更に大きく上回るのではないかと考えています。

今までを振り返ると、指標によって格差の捉え方は変わってくるようです、
私たちはそうなると一つの指標だけでなく様々な指標を把握し、
その指標はどのような計算方法であることを理解して、その数値を理解しなくてはならないでしょう。
ただ一応、今までのシリーズ3回をまとめると、
少なくとも2000年までは格差は拡大していました、
しかしその後は、格差拡大はあったかもしれないが
それよりも日本の景気が悪くなったために全体的に貧困化が進み、
それが低所得者の増加につながった、ということです。
ただし若年者には格差拡大はあったと思われるデーターがあります。

次回は、
健康の社会格差に関する論点の整理、です。
posted by リハ技師 at 16:13| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康の社会格差 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする