2013年07月12日

新自由主義的医療改革の本質的ジレンマ

TPPシリーズ、
とりあえず今回で一時終了、再度また行う事もあると思います。

『…、新自由主義的医療改革を行うと、企業の市場は拡大する反面、医療費(総医療費と公的医療費の両方)が急増し、言利用費抑制という「国是」に反する…。私はこれを「新自由主義的医療改革の本質的ジレンマ」と呼んでいます。
 具体的には、高所得国における医療改革の経験と、医療経済学の実証研究で、以下のことが確認されています。@営利病院は非営利病院に比べて総医療費を増加させ、しかも医療の質が低い、A混合診療を全面解禁するためには、私的医療保険を普及させることが不可欠ですが、私的医療保険は医療利用を誘発し、公的医療費・総医療費が増加します。B保険者機能の強化により医療保険の事務管理費は増加します。』

混合診療全面解禁になったことを想定しましょう。
そのような状況では必ず営利病院を政府は認めていくでしょう、
混合診療解禁における新自由主義的サイドの根本理由として、
医療分野でも経済活性化して儲けられる仕組みを作りたいからです。
営利病院は儲けるために行うので、
患者さんにとって本当に最低限必要な医療ではなく、
本当はやらなくてもいいような検査をいろいろ言い訳して、
その検査を行ったりする事が数多く出てくるかもしれません。
それを監査するところもありますが、全てを監査しきれるかも怪しいですし、
監査する量が飛躍的に増加することは容易に想像でき、
そのための監査する上での事務管理費は大きく膨れ上がるでしょう。

このような混合診療全面解禁することが、
医療費を膨張させていることは、
財務省も気づいているようだ、と二木氏もしています。
(つまり財務省も混合診療全面解禁には反対)
ゆえにTPPでは国民皆保険制度の崩壊(つまり混合診療全面解禁)にはならないとも二木氏は述べています。
ただしTPPが医薬品・医療機器の高騰をもたらす可能性が高い事は否定できない事実であり、
何度もこのブログで述べていますが、
国民皆保険制度が変質してしまう可能性は捨てきれないと思われます。

次回からは、次々と電力会社から原発再稼働の申請が起きている中、
本当に原発は安全なのか、報告したいと思います。
引用文献は、国会事故調報告書です。
posted by リハ技師 at 18:46| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月11日

ISD条項

TPPシリーズ。
引用文献:TPPと医療の産業化 勁草書房 二木立

次に引用されるのは上記の引用からですが、
著者も別の論文から参考にしてまとめたものです、
孫引きになってしまいますが、文献名は記載しますのでご了承お願いします
『ISD条項は、歴史的にみると、先進国が発展途上国政府による外国企業の強制収容から自国の進出企業の権益を守るために生み出されました。しかし、NAFTA(北米自由貿易協定)で、それが初めて多国間協定に導入されて以来、状況が一変し、アメリカ企業等が、この条項を拡大解釈して、他国政府を提訴するようになりました。日本が今までにこの条項で訴えられなかったのは、今までは日本が投資する側で、投資される側ではなかったからにすぎません。日本にとってTPPの最大の相手国がアメリカであることを考えると、TPPにISD条項が盛り込まれた場合、訴訟大国のアメリカ企業がこの条項を用いて、日本政府を訴える蓋然性は確実に高まります。しかも、国際投資紛争解決センター等での審理の判定帰陣き「公正かつ公平な待遇」という。アングロサクソン的な法理念に基づいており、日本に極めて不利です。その上、この審理は一審制で、判決に不服でも上訴できません。』

確かに相手が発展途上国であれば、
発展国側国内の状況が不安定であるため、最初の約束が守られない可能性が高いかもしれません。
その時には国際裁判に訴えられるISD条項は必要なのでしょう。
しかし先進国同士で、この条項を入れ込むことに大きな疑問符がつきます。
今回のTPP参加交渉で、
医薬品・医療機器に関して企業が自由に価格を設定できるような仕組みにOKを出し、
TPP交渉国がそれでいったんまとまり、
TPP協定を結べば、もう引き返すことはできません。
前回述べた医薬品・医療機器の高騰を招き、それに伴い社会保障費が膨れ上がります。
そして後は医療報酬全体のパイを小さくするしかないのです。
それで国内の医療機関が立ちいかなくなったからと言って、
医薬品・医療機器を現在のような国で設定するやり方に戻ろうとしたら、
ISD条項によって国際裁判で必ず負けるでしょう。
商売をする上で公正さはあるのかという視点が大きなポイントとなるため、
日本のやり方における患者の自己負担や病院・施設の経営の事を考えての薬価抑制は、
商売の邪魔をさせたと判断させられます。

次回は、今までの話と重なりますが、
新自由主義的医療改革の本質的ジレンマです。
posted by リハ技師 at 19:33| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月10日

米豪FTAで医療は?

TPPシリーズ、
引用文献、「TPPと医療の産業化」 勁草書房 二木立

『2005年1月に発行した豪米FTAの交渉過程でも、アメリカ政府はアメリカの製薬団体であるPhRMAの要求に基づいて、オーストラリア独自の「医薬品給付制度(PBS.その核心は費用対効果の評価に基づいた医薬品価格の抑制)の廃止を執拗に求めましたが、オーストラリア政府が最終的に拒否したためPBSの根幹は守られました。しかも他国のFTAと異なり、ISD条項も盛り込まれませんでした。しかし、PBSリストに掲載される医薬品に2つの類型、すなわちF1(ブランド薬)とF2(ジェネリック薬が設けられ、政府はF1医薬品に対して「不相応に高額の支払いをしてきている」とされています)』

ブランド薬、新医薬品と読み替えてもいいようです。
オーストラリアはその新薬においてでさえも、
引用文にあるPBSがアメリカ国内価格の1/3〜1/10に抑えていたのです。
しかし医薬品の知的財産権保護を理由に、
新医薬品の卸売価格を引き上げることが可能になりました。
この本で二木氏の指摘は非常に大人しい書き方をしていますが、
新薬の価格がオーストラリアでは実際に高騰していると、
国会でも取り上げられたことがあります、
そしてオーストラリアの医薬品費が大きく増えた事も報告されていました、
日本でこのような事態になったらどうなるのでしょうか。
日本ではすでに社会保障全体の給付を抑えようと、政府は様々な提案をしています。
そのような社会保障費全体を抑制しようとするなか、
医薬品が高騰していけば、それ以外の社会保障費を大きく削減していかなければいけません。
企業の儲けのために、
なぜ営利ではなく公的に仕事をしている病院や施設がそのあおりをくわなければいけないのか、
もちろん患者・家族にも自己負担は増えていきます。
全くブログ管理者には納得できません。
医療に営利を煽るような仕組みを作ることは、是非とも辞めさせなければいけません。

この医薬品・医療機器の価格規制の撤廃は、
非常に慎重なこの著者である二木氏もTPPの交渉内容になりうると断言しています。

次回はISD条項について、です。
posted by リハ技師 at 20:15| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月09日

米韓FTAでの医療

原発がとうとう本格的に稼働しようと動いています。
当ブログでもTPPシリーズが終わり次第、再度特集を組んでいきます。

TPPシリーズ
引用文献「TPPと医療の産業化」 勁草書房 二木立

米韓FTAでの医療
『2011年11月に韓国国会で強行採決され、2012年1月に発行予定(ブログ管理者注:現在は既に発行)の韓米FTAの第5章「医薬品・医療機器」の妥結内容は、米国が米国通商代表部の「外国貿易障壁報告書」等を通して日本に要求してきたことと酷似しており、私はこれを初めて読んだとき”ホラーストーリー”と感じました。それもそのはずで、韓米FTAでは、米国の強い要求により、従来知的財産権保護の国際基準とされていたWHOのTRIPS(知的財産権の貿易的側面に関する協定)を大きく超える保護水準(「TRIPSプラス」)が設定されます。
 私が一番驚いたのは、米国の製薬企業が韓国政府の定めた医薬品・医療機器の償還価格に不満がある場合は政府(…中略…)から独立した「医薬品・医療機器委員会に異議申し立てできるようになったことです。』

もう少しわかりやすく言うと、
米国のメーカーで出された薬剤に関しては、
そのメーカーが不当に安く価格設定されたと自社が判断すれば、
政府に決定の見直しを求めることができるというものです。
他にもその米国企業の韓国内での医薬品の認可に遅延が生じた場合は米国に保障しなければいけない、という文章もあります。
もう明らかにメーカー重視の内容で、この中に当然、患者のことは考えられていません。
実際、最近になって、米国はこの協定を使用してきました、
『企業が米国製医療器具の値上げを韓国政府に認めさせる初の事案が論議を呼んでいる。政府は引き上げをいったん拒否したが、米韓FTAで設置した第三者機関が要請すると、承認する方針に転じた。』
もうすでに韓国での医薬品・医療機器の価格はもう米国の干渉をうけています、
今後、韓国の医薬品・医療機器の価格が高価格で高止まりしてしまう可能性があります。
ここで反論があるでしょう。
逆もあるのではないか、というものです。
韓国のメーカーが米国内で安く価格設定された場合は見直しを申請することができるのではないかと…、
しかし、もともと米国は企業寄りの政策、オンパレードの国、
お金のない患者のことなどをあまり想定していない国なので、
高価格の医薬品・医療機器の設定でかまいません、
つまり米国ではFTAで訴えられる要素があまりないと踏んだ上でのこの協定なのです、
ちなみにこの協定は後戻りがもうできません、
韓国がもう辞めーたなんて言わせないような仕組みになっているのです、
韓国の医療はどうなっていくのでしょうか。

二木氏は著書の中で、
このTPPで混合診療全面解禁に進むことはかなり可能性が低いと言っています。
しかしこのような韓国の政策よりTPPの協定が上にくるような状態では、
社会保障に手厚かった国(韓国)が主体的に政策を作れなくなることを示しているとしか思えません。
日本はその後を追うべきなのでしょうか。

次回は、米豪FTAでの医療は? です。
posted by リハ技師 at 16:39| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月08日

医療特区に限定した市場原理導入

TPPシリーズ
引用文献は、
「TPPと医療の産業化」 二木立 勁草書房。
33ページから引用。

『アメリカの第2弾の要求は、医療特区(総合特区)に限定した株式会社の病院経営の解禁と混合診療の原則解禁(つまり市場原理導入)です。アメリカは建前としては、医療特区に限定しない「市場開放」を要求していますが、それには日本の医療関連法規全体の改正が必要であり、短期的には実現しないことを理解しているからです。「外国貿易障壁白書」の「医療サービス」の項にも、このことが以下のようにカッコ付きで示されています。「米国政府は、日本政府に対し、医療市場を外国のサービス提供者にも開放し、営利法人が営利病院を運営し、すべてのサービスを提供できるようにする機会(経済特区)を認めることを引き続き要求している」(2008〜2010年版、2011年版ではこのカッコ書きは消えましたが、理由は不明)』

この医療特区の説明に入る前に、
このようなTPP賛成派の反論があるかもしれません、
それは確かに医薬品が高騰するかもしれないけれども、
それ以上に貿易で活発になって国は儲かるので、
総合的に考えればメリットはあるのだという意見です。
まず貿易で活発化して国は儲かるには2つの意味があるでしょう。
一つは安い商品が入ってくる、もう一つは他国(TPP参加国)で安く売れる、というものです。
まず安い商品が入ってくるを考えてみます。
普通に考えれば消費者にとっては安い商品が入ってくることはありがたいことです。
そのことに反論はないように思われます。
しかし、安い商品が入ってくると言う事は、
日本で今まで売れていた商品が売れなくなってしまうということです。
そんなの競争社会だから当たり前だという意見はでてくるでしょう。
しかし競争社会だからと言ってその産業が立ちいかなくなってしまうと大きな問題が出てきます。
例えば農産物であれば食品自給率が下がり、
何か他国で災害が起きて食料が入ってこなくなった場合は、国民の命を守れなくなります。
そこでTPP賛成派はその産業を強化していけばいい、と簡単に言いきります。
強くするには競争される状況を作り出すことが重要だと説いてきます、
現在の農業・医療は特権で守られていると…。
しかし例えば医療において競争原理主義で経営を行えば、
例えば利益の少ない患者は医療を受けることが出来なくなってしまうでしょう。
利益はあってもリスクの高い患者には、
現在では訴えられないようなレベルの者が競争原理主義では訴える事が増え、
そのためにそのような患者の治療は忌避される可能性がでてきます。
医療する側の患者に対しての選別が起きてくるのです。

しかしそもそもこの安い商品が入る、というところに様々落とし穴があるようです、
例えばアメリカではこの安さを達成するために安全基準を大きく緩和させているという実態があります。
(貧困大国アメリカシリーズ 最新刊「(株)貧困大国アメリカ」を読むとよくわかります、
とにかく、これはひどいものでした、必読です、
この本のタイトルの通り、アメリカはもう国として機能していない、
営利一辺倒の会社になってしまったと感じる本でした)
安い、という事の裏に何があるのかも探っていかなければいけません。

では他国に日本の商品が売れる、というのはどうでしょうか。
ここに関しては長くなったので、また別の機会にゆずりましょう。


話を戻しましょう。
医療特区、ある地域だけに限定して医療の株式会社を認めるものです。
(二木氏は、この医療特区は短期的にはないが長期的にはありうる話としています)
一番心配なのは現在アベノミクスでは成長政策が弱いとされていて、
これからは成長産業に手厚い政策をうつためにアベノミクス戦略特区を作るというものです。
そしてその戦略特区がアメリカの要求している医療特区に近いものにならないか心配です。
具体的な内容をホームページで探したのですが、あまり具体的に書かれているものが見つからなかったので、
あくまでもブログ管理者の推測ですが、その内容を書かせていただきます。
医療ツーリズム、
その内容としては、
日本の医療水準は高いのでその医療を受けられること、
なおかつその海外の地で療養できること、
ついでに観光もしちゃおうというものです。
世界ではその医療ツーリズムが2008年度で600万人にも上り、
その市場規模は2012年には円にすると10兆円にもなります。
ここまでの理由だったら、ブログ管理者も悪くないなと思ってしまうのですが、
諸外国の場合、営利企業が多くの場合、参入しているようです。
すぐには営利企業を参入させることはさせないでしょうが、
この医療ツーリズムが軌道にのったら、
国の成長産業として非常に有意義だという、最初から結論付けられている結論を報告していくでしょう、
そしてその時に行う医療は自由診療である最先端医療を行う事がおおいに考えられます、
つまり全部自己負担なので富裕層が対象です。
次に医療特区を作り、
その中に営利企業の参入を許すという形にするのではないかとブログ管理者は考えています。
営利企業は優秀な医師を数多く引き抜いたりして、
その富裕層に応えられるだけの人材がその病院に過度に集中したり、
患者の選別(お金のあるなし)が過剰に行われたりすることが十分に考えられます。

次回は韓米FTAで医療は? です。
posted by リハ技師 at 18:59| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月07日

医療機器・医薬品価格への規制撤廃

今日からTPPと医療の関連について特集します。
引用文献は、
「TPPと医療の産業化」二木立 勁草書房
2012年5月発刊

pp32から引用
『日本がTPPに参加した場合、アメリカの要求がさらに強まるのは確実です。私はそれには3つの段階があると判断しています。
 第一段階は日本の医療機器・医薬品価格規制の撤廃・緩和要求です。これは米国通商代表部が毎年発表する「外国貿易障壁報告書」の定番です。2011年度版では「医療機器・医薬品」の貿易障壁の指摘と是正要求は、保険、テレビ、コミュニケーション(医療IT)に次ぐ長さであり、医療機器については外国平均価格調整ルールの廃止を医薬品に関しては新薬創出加算の恒久化と加算率の上限撤廃、市場拡大再算定ルールの廃止または改正などを列挙しています。』

まずわからない言葉が出てきました、
いくつか言葉の勉強をします。
満月外国平均価格調整ルール、
薬価算定ルール上は、
欧米4ヵ国(米英独仏)における同一薬剤の価格を参考に,
これらの先進国の価格から突出して高くもなく低くもない,
ある意味で国際的に平準化した価格を目指して,算定価格を調整することになっています.
満月新薬創出加算(正式名称は新薬・適応外薬解消等促進加算)
特許が切れていない新薬の薬価を特許期間中は据え置いて、
特許が切れ、後発医薬品が発売された時点で一気に下げる、というものです。
満月加算率は様々な加算率があります、
画期性加算(全く新しい着想の薬剤)
有用性加算(かなり高い有用性のある薬)
市場加算(市場規模が少ない薬)などがあります、
カッコ内等の条件が満たされた時に一定程度の加算があります(ただし上限あり)
満月市場拡大再算定ルールは、
ある医薬品の売上げが、「当初の想定の2倍以上」、
かつ「年間150億円超」、そして、「類似薬効比較方式」で薬価が決められたものについては、効能追加という比較対照薬との類似性が損なわれたときに薬価を引き下げるというものです。(最大25%の引き下げ)

これらすべての言葉を把握し、
先ほどの文章を読むとわかるのが、
アメリカは薬剤を高く設定し、製薬企業が儲かる仕組みを作りたいということです。
このことが認められるとどうなるでしょうか。
ますます医療保険財政は薬剤費(新薬など)の高騰で苦しくなります、
そして結局しわ寄せは診療報酬本体にいき、
実質上、診療報酬本体は大きく引き下げになり、地域の医療施設の経営は苦しくなっていきます、
また患者負担増も求められていくことも容易に想像できます。
逆に製薬会社の利益は大きくなっていくでしょう。

医療は人の命・健康がかかっています、
そこに「稼ぐ」という要素が非常に強い仕組みを作ることは、
そのまま命・健康が脅かされるということになります、
それを許してはいけません。

この医薬品・医療機器に関しては、
TPP対象項目に入っている可能性は極めて高いと内閣府も認めている話です。
そしてこれは与党自民党が守ると宣言している内容ではありません。
医療関係で与党自民党が公約しているのは、
国民皆保険制度を守ると言っていることに過ぎません。
ただしこのTPPでその国民皆保険制度の質を大きく変化させていくことになりかねないと思われます。

次回は、医療特区に限定した市場原理導入です。
posted by リハ技師 at 16:08| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月09日

混合診療 TPP交渉の対象となる可能性?

『混合診療の解禁に賛成する人は、こう説明する。解禁されると全体の自己負担額が下がるから、受けられる人が増える。新たな医療への需要も高まり、先進国から様々な医療が入ってくると、結果的に患者の選択肢が広がる。解禁に賛成の立場の恵佑会札幌病院(札幌市白石区)の細川正夫理事長は「先進国で認可された薬などは患者の自己責任で混合診療を認めてもいいのでは」と話す。
 Q 逆に反対する人の理由は。
 A 新たな薬や治療が海外からもどんどん入ってきても、それらは保険外診療なのでやっぱり高額だ。金銭的に恵まれていないと受けるのは難しい。解禁に反対の立場の日本医師会などは、解禁されたら多くの医療機関はお金のもうかる保険外診療を増やすようになり、患者の自己負担額はさらに増えると言っている。』
(北海道新聞・朝刊 2013年3月20日 記事引用)

混合診療が初耳の人もいると思いますので、
これも上記の記事から説明されている文章があるので引用します。
『公的医療保険が適用された薬や治療技術は国が医療費を決めており、患者の自己負担は現役世帯なら3割に抑えられている。保険の効かない保険外診療は10割、つまり全額自己負担で、「自費診療」「自由診療」とも呼ばれる。
 現行では、保険診療と保険外診療を一緒に受けると、診察、薬、入院など通常なら保険でカバーされている部分も保険適応外となって全てが自己負担となる。TPPで話題に挙がる「混合診療の解禁」は、保険外診療を併用しても保険診療分が3割負担のまま据え置かれるという意味だ。』

説明の仕方が逆になって申し訳ないです、
混合診療解禁について、ブログ読者でも意見が分かれるかもしれませんが、
当ブログでは混合診療の解禁には反対です。
確かに先進医療では、
日本では様々な治験などをえて、かなり遅れて保険適応になる場合があり、
その間に助かる命が助けられない、ということはあるでしょう。
その当事者にもなればそう考えるのは自然だと思います。
しかし冷静に考えると、この解禁を許してしまえば、大変なことになります。
混合診療後の先進医療は、
病院としては自由診療になりますから価格も勝手に設定できるような儲かる話なので、
保険適応しなくても、
商売的にはその医療はなりたってしまう可能性が高いと思われます。
わざわざハードルの高い保険適応にチャレンジする意味が失われ、
先進医療は保険適応しない、ということになる可能性が高いと思われます。
そして医療技術は進歩しますからそれに伴って、徐々に保険適応外は増え、
医療格差は飛躍的に拡大していくでしょう。
儲けること自体は悪い事ではないですが、
医療に儲け主義の要素を強くすると、命の選別につながってしまいます。
そして国民皆保険制度は崩壊していきます。

この混合診療禁止が適法なのか、そうではないのか最高裁でも2年前に争われ、
混合診療は適法であると判断されました。
仮にTPPで混合診療解禁になるような協定を結んだ場合、
この最高裁判決よりもこのTPPを重視することになります、
なぜなら当然ですが最高裁で混合診療禁止は適法であると示されたことは、
交渉している人は理解しているので、それを承知して結ぶというのは確信犯であること、
そしてまたいったん結んだ場合、前回のブログでも指摘したように反故にできません。
多額の賠償金と各国の大非難(国際問題にもなるでしょう)が待っているのですから…。


だから混合診療解禁はTPPの俎上にのらない、という人もいるでしょう。
そうであればいいとは思っています、
しかしこれも前のブログで言ったように、
例えば薬価に関しては予断を許さないと言っていいでしょう。
しかしそもそもよく考えて見れば、
交渉に入るまでその交渉項目内容が明らかにならないというのも不思議なところです。
本来であるならきちんと明らかにして、
そのような内容であればそのグループに参加して協議したほうがいい、
もしくはそれでは参加しない方がいい、と判断するのです。
それさえできないTPPです。


7月以降、様々漏れてくるTPPのニュースは皆さん、
聞き逃さないでください。
posted by リハ技師 at 12:07| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月07日

TPP参加に医療関係者 懸念

『医療保険制度関連で議題となる可能性が取り沙汰されているのは@国民皆保険制度の見直しA混合診療(保険診療と保険適応外診療の併用)の解禁B営利企業の医療機関の経営参入―など。安部晋三は国会答弁で「国民皆保険制度を揺るがすことは断じてない」と述べてきた。しかし、米通商代表部(USTR)は交渉参加国に公的医療保険制度の運用で公平性と透明性を確保するように求めており、医療関係者は「民間保険会社などの日本進出を後押しする狙いだ」と警戒する。
 一方、医薬品のデータ保護は知的財産分野の検討項目となっている。このデータ保護の措置は新薬の開発会社が持つ治験データをジェネリックの承認申請に援用するのを一定期間禁じ、ジェネリックの開発を制限するものだ。
 日本にも同様な仕組みとして「再審査制度」があり、原則8年間は新薬メーカによる治験データの排他的独占が認められる。だが、米国ではバイオ医薬品に関して12年間のデータ保護期間を設けており、これと足並みをそろえることになれば「バイオ後発薬の日本での普及が遅れる」(業界団体幹部)可能性がある。』
(日刊工業新聞・朝刊 2013年3月15日 記事引用)

昨日に引き続いてのTPP関連記事です。
今回の記事の前に、
昨日のブログで言い足りなかったことを一つ、
なぜアメリカは保険を売りたいのか、です。
まずその前提として押さえておきたいことがあります。
(医療から話はずれますが重要な点です)
それはアメリカの輸出倍増計画です。
リーマン・ショックまでアメリカは世界経済を大きく引っ張ってきました。
しかしそれはアメリカだけが輸入し、一方的に経営収支赤字を計上する、
アジア諸国は輸出一本やりで、形状収支黒字をため込むという、
世界的な貿易不均衡でした。
しかしそれが許されたのはアメリカの住宅バブルがあったからでした。
リーマン・ショック以降、
アメリカは自国の過剰消費によって輸入超過を続けることはできないと認識するまでにいたります。
そのためにアメリカは輸出を促進し、輸入を抑制して、計上収支の赤字削減をしようとしているのです。
それが表れたのが、2010年の一般教書演説における「輸出倍増戦略」でした。
この戦略は2つの面でとらえる必要があります。
まず多くの国がアメリカへの輸出依存という大きなアンバランスは問題であり、
他の国の内需拡大を推し進めることによって、
そのバランスを安定化することは世界全体の利益になるということです、
しかし、別の側面では、
この輸出倍増計画はアメリカの失業率を減らしたい、
そのためには他の国が犠牲になってもかまわないという思想がみえてきます。

各国が内需拡大政策をとり、アメリカへの輸出一辺倒にならないようにということであれば、
日本としても協力できると思います。
しかし、アメリカはなるべく輸入はさせない、輸出しやすくなる体制を世界戦略として描いています。
その輸出用品としてまず挙げられるのが農業の生産物でしょう。
しかし農産品はかなりアメリカでは機械化されていて、アメリカの労働者を大きく増やすものになっておらず、
それほど大きく期待されていないと聞いています。
(怖いのはニュージーランドやカナダ・オーストラリアです)
工業の商品に関しては日本は十分に関税もかなり低く、
現時点でもその障壁も低いものですから、
大きく労働者の確保も大きくないはずです。
現時点でアメリカから見て日本にうまみがあるのはサービス産業だと思います、
そして特に医療保険分野(他に知的財産分野など)なのです、
あまり参入できていない分野での貿易自由化を狙っています。



さて薬価の話に戻して…。
日本やオーストラリアやニュージーランドなどは、
薬価を低く抑えて患者の薬の自己負担を軽くさせることを行っています。
アメリカではとにかく輸出企業が儲かる仕組みにしたいため、
国が関与して薬価を低く抑えるという仕組みは絶対崩したいところです。
この点に関しては日本としてはアメリカ以外と共闘できる国は、
先ほどのニュージーランドとオーストラリアがありますので、
後は他の国とどれだけ手を組むことができるのか、です。
この例えば薬価制度がアメリカ流になったとしたら…。
これ一つとっても日本では重大な変更です、
そしてこれは多国間のルールのために、
後でこれは大変だから一国の事情で途中から変えることはできないし、
変えてしまったら国際裁判で必ず負けて、莫大な賠償金を払う事になってしまいます。
そして薬価だけでなく、様々な分野にわたって俎上に上がっていますので、
必ず多くの項目にわたってかなり妥協を強いられる分野はでてくるでしょう。

このような各国の輸出産業のみを重視したTPPは、
日本がこれまで培った制度・文化を必ず壊していきます。
絶対、許してはいけません。
posted by リハ技師 at 15:45| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする